鬼神姫(仮)



「鬼神姫。その名の通り、鬼であり、神であり、姫である者です」

緋川は説明になっていない説明をした。

「……人間じゃないってことだな」

銀がそれだけ言うと、雪弥が整った眉をぴくりと動かしたように思えた。だがそれは気のせいだったのか、雪弥は何でもないかのような表情で口を開いた。

「妾は、彼(か))の鬼神姫、葛(かずら)姫の子孫。そしてそなた達はその葛姫に忠誠を誓った者の末裔」

雪弥の声は耳ではなく、直接脳に語り掛けているかのように感じられた。

「そなたの言う通り、妾は人間ではありません。鬼の神であり、鬼の姫。その存在は絶対なるもの」

そう言われても其処にいるのは只の人間の少女にしか見えない。それで鬼だ神だと言われても何の実感も湧かなかった。

「そなた達は彼の古(いにしえ)から、妾を護る運命にある。四人の番人、東、西、南、北。それぞれから妾を護るのがそなたらの役目」

淡々と語る雪弥の顔に感情というものは読み取れない。





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