鬼神姫(仮)
「巴。この寒さは身体に触ります」
巴の背後から七海が小さく告げた。まるで聞く者を虜にしてしまうような甘い声で。
「ああ、はい」
巴はそれに対し、頷いた。
ーー身体が弱いのは相変わらずなのか。
だとして、務めを果たせるのか。
陽の中にはそれしかなかった。
必ず生きて帰る、だとか、仲間と協力する、なんて言葉はない。ただ、現鬼神姫である雪弥を死なせずに終わらせる。それしかない。
「また後でな」
陽が声を掛けると巴は微笑んだが、その横では陽の考えなどお見通しらしい七海が小さな睨みを投げ掛けてきた。