think about you あの日の香りとすれ違うだけで溢れ出してしまう記憶がある

コンパからの

女の子を2人。1人は人数合わせの彼氏持ち。

4×4でいかにもな設定を組んだ。

粒ぞろいのモテ系ばかりだ。

(私が本気になれば、こんなもんよ。)

どーだと言わんばかりに、適当な居酒屋に入った。

自己紹介をして、大学時代にバカやってた思い出話をする。

武勇伝を脚色して盛り上げる。

飲む。また飲む。

酒は強いほうだから、酔う心配はない。

あとは、幹事だから友達を無事に帰すこと。

なんて、責任感の強い私。

幹事のコンパなんて、意味がない。

幹事だから、相手は顔見知りだし、

しきってると、気が強そうだとか、歳上だとか言われて、誰も寄ってこない。

なのに私はコンパと言えば、幹事参加しか経験がないのだ。

残念だが、姉御肌の性格上仕方がない。

二次会でカラオケに行こうということになった。

女の子は二人帰った。

フリーの子がお帰りと言うことは、脈なしのサインだ。

さて、残りは彼氏持ちの美香子。

何事もなく終了しそうだな。

カラオケが終わってタクシーを拾い、名古屋駅まで。

男連中はキャバで飲み直すのか、栄方面へフラフラと消えていった。

毎度のごとく、ぐっちゃんにフォローのメールを送る。

“今日は、楽しかった。ありがとう。また誘ってね。”

常套句だが、毎回私の本音だ。

コンパから1週間したら、ぐっちゃんからメールがきた。

ぐっちゃんの友達の畑山が美香子を気に入って、4人で会いたいというのだ。

(なんだか、めんどくさいことになりそうだ。)

ぐっちゃんにお裾分けのはずが、畑山がメインに。

ちっとも面白くないけど、ぐっちゃんの誘いを断れない私は、その誘いも迷わず承諾した。

週末、白のBMWでいつものようにぐっちゃんが迎えにきた。

畑山は美香子を乗せて春日井にいるらしく、二人で現地へ向かう。

私はエスカーダの香りをまとう。

ぐっちゃんも反応する。

「…それって、俺があげた香水?」

思わず顔がほころんでしまう。

うつむいて、にやけてしまいそうなのを堪える。

それでも、抑えがたい。

気持ちを解放するように、笑顔を向けた。

「…そうだよ。いい香りでしょ?」

ぐっちゃんは前を見ていたけど、柔らかく笑った気がした。

「…そうだね。」

絞り出したような声だった。

なんだか、甘い空気で恥ずかしい。

でも今日は、1日一緒なんだから、恋人気取りでも許してくれるよね。

誘ったのは向こうなんだから、私は堂々と彼女気分を味わわせてもらうことにしよう。

今日は、甘めで決まりだな。

いつもみたいに構えなくていいんだから、素の私を出してぐっちゃんに甘えてやろう。

ラブモード全開で、引かれても今日だけ…。

今日だけ…。







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