think about you あの日の香りとすれ違うだけで溢れ出してしまう記憶がある

ザックイ

「ねぇ、これ。」

言葉少なに、ぐっちゃんが手渡す。

サングラス。

「なあに?これ、買ったの?」

「オシャレでしょ?」

得意気に私に自慢する。

ぐっちゃんは、お気に入りをいつも私に自慢する。

私は、少し笑う。

「ふふ、自慢だね?」

「…自慢だよ。」

フンと鼻をならし、車を走らせる。

この助手席ポジションて最高だな。

彼女の席ってこんなにも気持ちがいいのか。

彼女気分を満喫していると、ぐっちゃんの自慢の続きが始まった。

「GUCCIのサングラス。」

「あー、ぐっちゃんだけに(笑)」

ネタかよ。

キャバで使う気だな、コノヤロー。

「…その、横のとこが花柄でかわいいでしょ?」

「あら、ほんと。」

なんとなくかけてみる。

鼻が低い私には、頬っぺたがレンズについて具合が悪い。

「なんか、これー。ねぇ?ささるんですけどぉ?」

「あー!!!!」

ぐっちゃんは慌てて取り上げた。

それもそのはず、GUCCIのサングラスには、ファンデがべっとりついていた。

「てんめェー…。」

うわ。しまった。

きったねーな!と言わんばかりだ。

恐る恐る、サングラスを受け取りティッシュで拭う。

そんなに、怒らなくてもいいのに。

せっかくのデート気分が台無しだ。

ぐっちゃんは、超綺麗好き。

車はいつもピカピカだし、ゴミ1つ落ちちゃいない。

会社帰りに食事にいくときは、決まって銭湯で風呂を済ませてからだ。

潔癖症め。

最初はどんなセックスアピールかとドキドキしたものだが。

当然、HDDナビのタッチパネルを触ったときも、私の指紋を拭き取っている。

実は片付けられない女の私。

カミングアウトはできそうにない。

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