think about you あの日の香りとすれ違うだけで溢れ出してしまう記憶がある

平井

平井は優しくて、遊びにきた私をひらすら構ってくれた。

隣に座らせてキス。

ロフトに連れていって、キス。

いつも、私に聞いてくる。

「…好き?」

決まって私は答える。

「だぁいすき。」

キス。

いつも二人は甘い雰囲気で、人がいないときは肌を合わせていた。

こんなにもカラダの相性がいい相手は生涯現れないだろう。

「俺のチェリーを奪ったんは、愛子や。」

ほんとか知らないが、平井はいつも言っていた。

最中は、

「痛ない?…俺のほう見いや。」

と、優しく大事そうに私に触れる。

「俺な、愛子とほんまに付き合えるんかなと、思ってたわ。」

ヤンチャな癖に繊細だ。

「…愛子。かわいい…。」

Hの最中に、平井の熱っぽい声で愛を囁かれると、必ずカラダの芯が痺れてしまう。

何度も何度も、熱く痺れてしまう。

この時私には別に彼氏がいて、平井は浮気相手だった。

これを、正面から責めてきたのが、一也だった。

「平井が許しても、俺は許さんぞ。愛子。彼氏と別れろよ。」

でも、一也だって美香子以外の女と浮気していたのだ。

私はそれを知っていたので、一也の叱責をはねつけた。

平井は、静かに一也をなだめる。

「ええねん。好きやから。」

ピンと私の胸に刺さる。

こちらからは表情は分からないが、平井の声は切ない。

平井は愛情の深い人だった。



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