think about you あの日の香りとすれ違うだけで溢れ出してしまう記憶がある

約束の夕食

ぐっちゃんとの夕食。

今夜のお店はどこにしようか。

服は何にしようか。

ぐっちゃんは、きっと花柄のワンピースとか好みなんだろうな。

プールサイドのオーバー9のヒールをはく。

髪は巻いて、ヴィトンのバックを用意する。

香水は、ぐっちゃんからの誕生日プレゼントでもらった、エスカーダ。

この香りに包まれると、心踊る気持ちだ。

だけど今夜は緊張をまとう。

不思議な緊張を味わいながら、ケータイ片手に家を出る。

そろそろ、銭湯で汗をながし、バッチリ決めてBMWを滑らせるようにして、うちの前に横付けするんだろう。

カッコいいな。

夜でも、あのGUCCIのグラサンをするんだろうか。

実家のマンションのエレベーターを降りて、エントランスから表に出た。

(いた。)

BMWに身を寄せて、ケータイを片手に私に電話をかけようとしていた。

「あれ?」

私に気づいて顔をあげた。

はにかむ様子に、私もなんとなく照れる。

きっと今手を伸ばしたら、届く。

肌が触れる。

私がその手に触れたら、彼はどんな顔をするんだろうか。

恥ずかしい?

イヤ?

困る?

いろんな妄想を胸に秘めて、そうっと声をかけた。

「そろそろ、来る頃だと思ったの。」

ぐっちゃん、私。あなたのこと、よくわかるの。

テレパシーみたいに、映像でリンクしてるの。

あなたには、私の思考がわかるの?

分かってるなら、教えて。

自分がわからないの。

こんな訳のわからない私と、結婚したい?

ねぇ、今何を思うの?

今夜はどんな話をする?

私の頭の中、ぐっちゃんでいっぱいだよ。
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