think about you あの日の香りとすれ違うだけで溢れ出してしまう記憶がある

距離

だんだん離れてゆく。

遠のいていって、またね。って予定のないこの先を告げる。

だんだん忘れていく。

メールも電話もしない。

しなくても、大丈夫な自信がある。

でも、その大丈夫は、絆があるから。とか、

絶対心は離れない。とかいうものだったのに。

今ではもう、あなたがいなくても大丈夫。やっていける。

それって必要ないってこと?

それって、いらない存在ってことなんだろうか。

ぐっちゃんとの距離は、考えている以上に遠く離れていた。

こんなにも遠かったなんて、わからなかった。

いろんなことを見失うほどに離れてしまっていた。

すべてわかってるつもりでいた。

そんなことを思い込むほどに、ぐっちゃんのリアルは私から遠のいていた。

月日が流れ、克明に刻まれていた私との絆は薄れて、

彼には彼の生活があって、絆を紡いでいた。

もちろん私ではない、私の知らない、別の誰かと。

現と夢の間で揺らいで、勝手に苦しんでいたのは私だけ。

いつまでも過去に囚われて、苦しみながらも

過去の幸せな時を思い出しては、うっとりと妄想していた。

悪趣味だな。

自分がこんなにも暗い人間だったとは。

社会人として、華々しく働いていたときの私は

かなり強気で猛進していたから忘れていたけど。

本来の私は臆病者で、誰かに決められたレールに

乗っていないと不安だった。

型通りにいなければと、はみ出すことを恐れて、

他人の顔色を伺っては軌道修正してきた。

風に吹かれる柳のように。

そういえば、ぐっちゃんは違ったな。

彼はよく、陰口を叩かれて傷ついた私に、

「そんなに人がきになる?」

と言っていた。

びっくりして、言葉が出なかった。

同時に勇ましい男性らしさを感じて、ぐっと心を惹かれた。

また、私がストーカー被害にあった時は、じっと黙って話を聞いていて、

「俺が、ぶっとばしてやる。」

って低く唸った。

涙が出た。

だれも私の味方がいなくて、言葉だけでも

そんなに力を込めて伝えてくれる人はいなかった。

「女の子なんだから、いろいろあると思うけど。

気をつけてね。なんかあったら言ってね。」

ほだされてしまったというか。

完全に落ちた。

こんなにも、トキメキポイントがあったのに結ばれないなんて。

私たちガチでご縁がない。
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