ヘビロテ躁鬱女
 なんとも言えず、不機嫌な表情で横溝を見据えた。


なにも知らない眼で横溝は見詰め返す。じっと時が止まる間で、私の心を読もうとしている。


「お前、なんでむくれているの? まさか鉄平のこと……」


見透かした表情を逸らし、席に戻った。


「狂子、遅いよ! 赤ワインをもう1本頼んでおいたからね」


「……うん。ありがとう」


仏頂面の私が長椅子にドサッと座り、タイミング良く耳障りな着信音が鳴った。


会いたかったー会いたかったーと奏でるアイドルの歌。


「ごめんね、メール。あーんっ……ちょっと用事が出来ちゃったぁ。今日はこれで帰りますぅ~!

衣舞、また今度誘ってね。お金は明日請求して! じゃあ、輝さんにも宜しく言っておいてね。またねぇ!」
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