ヘビロテ躁鬱女
 見間違いじゃないかと、何度も瞬きを繰り返した。


「狂子さん達たち、ここにいたんですね! なんだ、衣舞さんもいたんだ……」


「鉄平、なんだってなによ! あれあれ……和歌子? なんで後ろに隠れているのよ?」


思い違いじゃない。やはり鉄平だった。


背後にいた和歌子が、ひょいっと顔を出した。


気づいてしまう。


和歌子が鉄平の片腕を両手で握り締めていること。


二人の距離や視線が、いつもと違う雰囲気で甘ったるく絡み合っていること……。


心臓が早鐘を打った。
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