ヘビロテ躁鬱女
 髪の毛がまるで黒いカーテン。


――これで貴方の顔を見なくて済むのかな。


それでも胸倉を掴む片手だけは離れなかった。


「なぁ、お前までそんなことを言わないでくれよ?」


一体、誰と比べているの?


「ごめん、謝るから。俺が悪いんだよな、全部悪いところは直すから……。だから別れるって言わないでくれ――」


声が震えている。


弱々しく、胸元の手までもが揺れている。


ああ。結構この人、弱者なんだ。
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