ヘビロテ躁鬱女
 こちらに向けられる手の平。


掴みたくなかった。その手を掴んだら、悪夢の始まりのようで……


「遠慮をするな」


手首を掴まれ、無理に立たされる。


いきなりだったので太ももの傷がズキッっと疼く。


そしてにっこりと微笑み、優しい顔、半月の眼で、洋服に付いた砂埃を払う。


さっきのことは、これで相殺されたかのように――


「でーきた! まったく世話が掛かるなぁ、お前は。あっちに小さな公園があるだろう? 行こうぜ」
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