ヘビロテ躁鬱女
 電話を掛け、鉄平に助けを求めたあの記憶が蘇る。


思い出して、少しだけ恥ずかしい気持ちになった。私の方が視線を下へ逸らした。


――普通に挨拶すれば良いのよ。仕事とプライベートは別物なんだから……。


ジッと立ち止まっていると、足元に靴先の影が入り込んだ。


「おはよう……狂子さん。体調はどう? ほら、前に電話をくれたよね? 具合が悪かったの?」


懐かしい声に顔を上げる。


どんな表情を向ければ正しいのか、良く分からなかった。
< 329 / 417 >

この作品をシェア

pagetop