ヘビロテ躁鬱女
「狂子さん? ちょっとぼんやりしてないでよ。テーブルとメニューを拭いてくれない? 1週間ぶりだけど益々不幸顔になっているね」


愛子が横から布巾を手渡してきた。


望んでいる訳ではないのに、幸せという小さな砂が、あっ気なく手の平から零れていく……自分でも、この砂の流れをどうしようも出来なかった。


布巾を手に取り、そっと近くのテーブルから拭き始めた。


「狂子さんって、いつだってそう。差し出されたものを受け取るだけ。自分から掴んだことなんてないんだね」


愛子の言葉が無性に腹が立った。


確かに、私はいつだってそうだったからだ。
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