ヘビロテ躁鬱女
「逃げようたって駄目よ! あのビールの注ぎ方……まるで私への当て付けのように見えたけど?」


――分ってたんだ?


ふっと、不用意にも口角を上げて声が漏れた。


「色眼鏡で見るからそう思うのよ。久しぶりに会ったし、みんな私のこと嫌いだし……まだ、まともそうな鉄平にお酒を注いだだけ。それだけよ?」


それでも和歌子は、まだ腕を放さず捲くし立てた。


「そんな言い訳で私が誤魔化されると思う? 狂子は輝さんと付き合っているのよね? 鉄平に電話を掛けたこと……知っているの輝さん?」


和歌子を眼光鋭く睨んでいたが、輝の名前で光が弱まった。


――輝は、知らない……。
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