ヘビロテ躁鬱女
「そうだね狂子、言ってみる! サーンキュ!」


衣舞はとても嬉しそうだった。飛び跳ねて店長の側へ駆け寄っている。


私は少しほっとしたように輝を見た。今にも眠りそうに、目を閉じたり、擦ったりしている。


親友に差し出す、目の前にいる彼氏。


なんだか不思議な感覚だった。


実家には戻りたくない。だったら輝の家にいたい。私が大人しくしていれば、そうすれば暴力は振るわれないのだから。


でも実家は違う。言葉の暴力は避けられなかった。


――でも衣舞に渡すんじゃ、もう駄目なのかな。輝の家にも居られなくなるのかな……。
< 391 / 417 >

この作品をシェア

pagetop