ヘビロテ躁鬱女
この部屋には古びたシングルベットの他に、小さなガラステーブルと使い古した箪笥があった。


もしかして、この家が建てられた当初は、ここは両親の部屋だったのかもしれないと推察した。


「ああ!!!! やっぱり想像した男! 腕も逞しくて素敵!」


「……え――衣舞? 衣舞なのか?」


壁が薄くて両耳を咄嗟に塞いだ。こんなところまで実家と似ていた。嫌な声や音がはっきりと聞こえてくる。


でもテーブルの上に載せたワインと目が合い、鼓膜を塞ぐ無駄な抵抗は止めた。


「……ああ――」
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