ヘビロテ躁鬱女
「……ごめんね狂子。この熱燗を運んでくれる?」


「お母さん、いつものことでしょう? 気にしないで」


夕食の時間。食べ物を運ぶのは当たり前のように、この家では私の業務だった。母の言われる通りにやり過ごす。


私は夜ご飯を美味しく食べたことがなかった。


鬼黄泉と父が笑いながらテレビ番組を楽しんでる。それを横目にしながら、今日も居間へと食前酒を運んだ。


「早く注げ、狂子」


お盆に載せた御猪口をつかみ、差し出す父親。


「本当に、おねぇーちゃんって暗すぎ! 食べ物くらい、明るく運んでよね?」


なんで私だけ、こんな扱いなの? 同じ人間、同じ姉妹なのに……。


タスケテ、タスケテ、タスケテ、タスケテ!


いつからか、耳元で別な声が聞こえて来る……これは私の声? それとも――?
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