ヘビロテ躁鬱女
 そういうこと? ……だったら口で言えば良いのに。


「赤ワインのボトルをこっちに貸して、開けるから」


衣舞がグラスとボトルを差し出し、目の前で輝がお酒を注ぐ。


この人も良く分からない。まぁ、みんな酔っ払いだし、気にしすぎるのは良くないか……。


「じゃあ! 俺は狂子さんのとぉーなりぃー!」


鉄平はお尻を突き出し、ぐりぐりと私の体を無理やり奥へと押し込んだ。そのせいで、こちら側の席が狭くなり、私の左腕と輝の右腕が密着した状態になった。


――体温が伝わる……も~やだなぁ~。


「鉄平、だったら席を交換してくれないかな?」


「店長の十八番! 待ってましたぁ~!」


タイミング良く音楽が流れ、鉄平への言葉は大音量に掻き消された。
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