ヘビロテ躁鬱女
「お前んちどこ? 酔いは醒めているし、大丈夫そうだから出発するよ。車に乗ったのは内緒にしろよ? 俺の彼女はやきもち妬きなんだ」


エンジンがブロロロローと大きな音を立て、新庄はラジオのスイッチを入れた。朝から聞きなれない音楽が流れる。


「ごめん。なんとなく雰囲気がいつもと違う気がして悪酔いしちゃった……

家はここから近いよ、隣の駅だから。飯田橋に行って欲しい――」


「お前、鉄平が好きなの? それなら良いけどさ」


鉄平。気を持たせちゃうことしちゃったかな……。


ドリンクホルダーにあったミネラルウォーターを手に取り、遠慮なく開けた。


「……いただきます」


一気に潤い、喉にお酒が粘りつく感じも洗い流されたようだった。


「鉄平さ。あいつ顔はもてそうもないけど、口がうまいんだ。良く考えろよ」
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