ヘビロテ躁鬱女
「この辺か? 可愛いのに勿体無いな。若いうちがモテて花なんだぞ」


「あ、ここ、ここ……お父さん起きてないと良いなぁ。苦手なんだ。

可愛いかぁー、でも仕方ないじゃん。トキメク人が現れないんだから……今日はありがとうございました。それじゃあ――また明日かな? バイバイ」


車は家の前に停まった。片手をドアに手を掛け、降りようとする。


するともう片方の手が握り締められ、それを阻止した。


びっくりして振り返り、新庄の顔をマジマジと見た。


「どうしたの? 新庄さん」


「今日ずっと様子が変だったから……悩みごとがあるなら俺に言って」


優しい穏やかな表情……いつもと違うのは新庄の方だった。


車の中に妙な空気が流れた。
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