ヘビロテ躁鬱女
 ドアの鍵をガチャガチャといじり、外へ出ようとした。指先がすべり、どうもうまくいかない。


胃袋に踏みとどまるお酒が、頭をクラクラとさせた。


だが抵抗する私を諦めたように新庄は手を放した。熱かった体温が遠ざかる。


「返事はゆっくり考えて」


「は? さようなら!」


車の扉はやっと開き、慌てて降りた。


小さなバックを引寄せ鍵を探すが、アルコールが回り、なかなか探し当てられなかった。


こんな状況が信じられなかった。家に帰りたくないのに、今は1分1秒でも入りたかった。


そんな自分に急に情けなくて、悲しくなる。
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