萬処御伽屋覚書〜着物男子と残念女子のゆるゆる繁盛記〜
序:従業員の話
連日連夜の残業と
専売特許の我慢強さが仇になったストレスとで
胃潰瘍で入院した。


散々会社に尽くした結果が病気だなんてツイてなさ過ぎる。

でもそれよりも私にとって辛かったのは、


入院中、誰も見舞いに来なかったこと。


沢山仕事を肩代わりしてあげた同僚も
仕事とは言い難い雑用も笑顔で対応していた上司も、
誰も来ることはなかった。


それどころか、復帰をしたら
「あれ、休んでたの?」
なんて言われる始末。


給湯室で先輩と若手の子が喋ってた。


私は「都合の良い空気ちゃん」なんだって。


心の中で何かが切れる音がした。



この会社に私がいる理由はない。


不意に思い知ってしまった。



自分から行動を起こすのが大の苦手な私だけど
その日はきっとやけっぱちだった。



勢いに任せて上司に辞表をたたきつけてやった。


急に戦力が減って大いに慌てたらいい。

焦ってお世辞を並べ立てて引き止めたらいいんだ。


そしたらそれを私は笑顔で突っぱねる。


次はこんな哀れな社員は作っちゃダメですよ?なんて優しく諭してやるんだから。
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