萬処御伽屋覚書〜着物男子と残念女子のゆるゆる繁盛記〜
そしてきっちり三ヶ月後、私は会社を辞めた。
見送りはいない。
でも、一応この三ヶ月の間にちゃんと送別会はあった。
誰が主役だかイマイチ分からない飲み会だったけど……
開催してくれただけ良いってことで自分の心に収めることにした。
定時で会社を出ると、いつもの帰り道よりもうんと早い時間の電車に乗り込む。
ラッシュ前の電車は乗客もまばらで、いつもは座ることの出来ない座席もいくつか空いている。
この時間に上がると電車ってこんなに空いてるんだ。
新入社員の頃以来の光景だった。
私はボックスシートの窓側の席に腰掛けた。
窓からは見慣れた景色が夕日に染められているのが見えた。
茜色に染め上げた世界は美しく、どんな建物も芸術品のように思えた。
そういえば、こんな風にゆっくり景色を眺めることも
ここ最近はなかったな。
疲れ過ぎて座席に座れることがたまにあっても
座った瞬間に熟睡だったしね。
車窓を流れていく茜色の街並を見つめていると、楽しかったこと、辛かったこと、色々な思い出が脳裏をよぎっていった。
「実らない努力もあるんだなぁ……」
ため息と一緒に小声で吐き出した。
見送りはいない。
でも、一応この三ヶ月の間にちゃんと送別会はあった。
誰が主役だかイマイチ分からない飲み会だったけど……
開催してくれただけ良いってことで自分の心に収めることにした。
定時で会社を出ると、いつもの帰り道よりもうんと早い時間の電車に乗り込む。
ラッシュ前の電車は乗客もまばらで、いつもは座ることの出来ない座席もいくつか空いている。
この時間に上がると電車ってこんなに空いてるんだ。
新入社員の頃以来の光景だった。
私はボックスシートの窓側の席に腰掛けた。
窓からは見慣れた景色が夕日に染められているのが見えた。
茜色に染め上げた世界は美しく、どんな建物も芸術品のように思えた。
そういえば、こんな風にゆっくり景色を眺めることも
ここ最近はなかったな。
疲れ過ぎて座席に座れることがたまにあっても
座った瞬間に熟睡だったしね。
車窓を流れていく茜色の街並を見つめていると、楽しかったこと、辛かったこと、色々な思い出が脳裏をよぎっていった。
「実らない努力もあるんだなぁ……」
ため息と一緒に小声で吐き出した。