【完】春紫苑
大きすぎる門。
偽物だらけなのに、それをごまかす化のように無駄に大きな家。
ここに住むのは大量のお手伝いさんと、形だけの家族。
カバンからスイッチを取りだし、門に向けて押す。
門なんて、開かなきゃ良いのに。
そしたら私はこの家に帰らずにすむのに。
だけど、思いとは裏腹に門は開く。
当たり前、スイッチを押したのだから。
それに、私にはここ以外に帰る場所なんてない。
重たい足を一歩、前へと進めた。
「負けるな、私……」