【完】春紫苑
ドアまでの、これまた無駄に長い道を歩く。
綺麗に手入れされた花。
噴水。
偽物を飾り立てるには立派すぎる。
大きな、ドア。
このドアを開けるときが一番憂鬱だ。
でも、開けるしかない。
手をかけ、ゆっくりとドアを開く。
「おかえりなさいませ、美琴お嬢様」
そこには笑顔で迎える沢山のお手伝いさん、皆女性だから世間的にはメイドと呼ばれる人物。
大量の金を積まれて、向けられている笑顔。
この中に本物の笑顔なんてあるのだろうか?
「ただいま」
そう呟いて、さっさと自分の部屋に戻ろうと思ったとき。
「お嬢様、旦那様がお呼びです」