【完】春紫苑


私はお母様を自由にしてあげたかった、それだけなのに。


お母様は望んでないんだね。






「美琴ちゃん……どこに行くの?」






部屋を出ようとした私にお母様が声をかける。


その声はとても不安そうで。



まるで


"帰ってくるのよね?"


そう言ってるように聞こえた。





でも私は振り返ることも、返事をすることもせず部屋を出た。







「お嬢様……奥様と旦那様は大丈夫なのでしょうか?」






部屋を出てから何人ものお手伝いさんに聞かれたけど、それにも答えることもなく私は家を出た。








< 138 / 474 >

この作品をシェア

pagetop