【完】春紫苑
私はお母様を自由にしてあげたかった、それだけなのに。
お母様は望んでないんだね。
「美琴ちゃん……どこに行くの?」
部屋を出ようとした私にお母様が声をかける。
その声はとても不安そうで。
まるで
"帰ってくるのよね?"
そう言ってるように聞こえた。
でも私は振り返ることも、返事をすることもせず部屋を出た。
「お嬢様……奥様と旦那様は大丈夫なのでしょうか?」
部屋を出てから何人ものお手伝いさんに聞かれたけど、それにも答えることもなく私は家を出た。