【完】春紫苑




「なぁー…美琴?」



「んー?」



「……やっぱり、何でもない」



「駿、何よそれ」






意味が分かんない。駿にしては珍しいな。


なーんて、軽い気持ちで、笑いながら駿を見た。




…………。


…ドクン、ドクン、ドクン。


静かに、だけど確実に鼓動が早くなっていく。


だって私が見た先にいた駿の顔はあまりにも真剣で。






"どうしたの?"






そう聞きたいのに。

何も、喋っちゃいけない気がして。






「ふっ」


「え?」



「何マジな顔して、俺のこと見つめてんだよ。照れるから止め……あーっ!!もうっ!!美琴、教室に戻るぞ」



「え?あ…うん」






笑ったかと思うと、駿は前髪をクシャクシャにして、突然そう言って立ち上がった。



そして、訳が分からずにいる私なんてほったらかしで歩き出してしまった。




え、なになに?


てか……


待ってよ!!!!










< 48 / 474 >

この作品をシェア

pagetop