【完】春紫苑
「なぁー…美琴?」
「んー?」
「……やっぱり、何でもない」
「駿、何よそれ」
意味が分かんない。駿にしては珍しいな。
なーんて、軽い気持ちで、笑いながら駿を見た。
…………。
…ドクン、ドクン、ドクン。
静かに、だけど確実に鼓動が早くなっていく。
だって私が見た先にいた駿の顔はあまりにも真剣で。
"どうしたの?"
そう聞きたいのに。
何も、喋っちゃいけない気がして。
「ふっ」
「え?」
「何マジな顔して、俺のこと見つめてんだよ。照れるから止め……あーっ!!もうっ!!美琴、教室に戻るぞ」
「え?あ…うん」
笑ったかと思うと、駿は前髪をクシャクシャにして、突然そう言って立ち上がった。
そして、訳が分からずにいる私なんてほったらかしで歩き出してしまった。
え、なになに?
てか……
待ってよ!!!!