【完】春紫苑
「おい、美琴。落ち着けって」
取り乱し出した私に駿が声をかける。
だけど、そんなの無駄。
それどころか今は、その駿の優しささえ煩わしい。
ドアから眺めていたけど、これじゃ駄目だ。
「美琴……っ!」
駿が呼んだけど、無視をした。
一歩、一歩、確実に将光のもとへと歩いていく。
流に取り押さえられてる将光にさっきみたいな勢いはない。
まるで怒られる前の子供のように、そっぽを向いて拗ねているように見える。
イライラしてるはずなのに私の足取りは静かだ。
それが逆に怖いのかもしれない。