暗闇の鎌【読みきり短編集】
 手の感覚や意識が遠のいていく。視界までもが、とうとう霞んでくる。


薄っすらと細くした瞳に飛び込んだのは、手首から飛び出た動脈だった。


まるで獲物を捕らえたかのように、ニタニタとよだれを垂らし、オジイサンはしっかりとそれを握り締めていた。


「彼の言う赤い糸とは、これのことじゃな? ほら血に染まると赤いじゃろ? 悪縁は早く切ってしまおうぞ」


動脈に差し掛かるメス。

――ブツリ。


これが私が見た、最後の景色だった。
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