暗闇の鎌【読みきり短編集】
 夜は毎回知らない男の人と、僕、ママと三人でごはんを食べるようになった。


好きだったチーズハンバーグが、味がよくわからなかった。


目の前の男の人は、おいしそうに食べていた。


ママの瞳をずっと見つめ、僕の存在がないかのように、二人だけの世界で、ハンバーグをナイフで切っては、口にいれていた。


おかしいなぁ。僕も同じようにご飯を食べているのに、好きな食べ物のはずなのに味がしない。だから言ったんだよ、素直にね。


「ママ、これ味がしない」


そういうと初めて男の人が僕の方を見た。目が細くなり、それは凄くおっかない顔だった。


ママも同じような顔をしていた。僕は言っちゃいけないことなんだと、うつむいた。


「たっくんは、いつから悪い子になったの。ハンバーグは大好物だったでしょう?」


そうだよ。でも味がしないんだよママ。
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