暗闇の鎌【読みきり短編集】
「確か、たっくんはチョコレートが好きだったんだよね? 

おじさん、ママから聞いていてチョコレートケーキを買ってきたんだよ。それなら食べれるだろう?

レイコ、冷蔵庫のケーキをだしてあげておくれ」


「もう貴方ったら、すごーく優しい。ちょっと待ってね、たっくん」


僕は申し訳なさそうに、顔を上げた。


二人は凄く楽しそうな笑顔に変わっていたから、ほっとし、ちょっとだけ胸が軽くなった。


ママはケーキを取り出し、僕と目の前のおじさんに差し出した。


僕は驚いた。このおじさんは、半分こせずに、ママに上げずにケーキを食べだしたんだ。


好きな人と半分こは普通のことだ。このおじさんは本当にママが好きなんだろうか?
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