暗闇の鎌【読みきり短編集】
畳の眼

一針一針丁寧に縫って作られる畳。そんな畳は念がこもりやすい物なのかも知れません。

古びた木造二階建てアパート。


軋む廊下、やる気のない時たま光を照らす蛍光灯。かび臭い、木の匂い。


お金がなかなか貯まらない俺は、家賃が格安なボロアパートで暮らしていた。


「畜生! 正社員で働きたいのに氷河期時代だって? こんなバイト生活から早く抜け出したいのによぉ……」


週五日、近所のコンビニでアルバイトをしていた。賞味期限の食べ物や要らなくなったものも手に入るので、なんとか食費を削ることが出来た。


「……金、なにに消えているんだろう。無駄使いはしていないと思うのになぁ」


毎度仕事を終えると、そんな愚痴を飽きもせずに言い、年期の入った扉を開けた。
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