暗闇の鎌【読みきり短編集】
 しゃがれた低音に振り返ると、白いシーツを纏ったテーブルの向こうに、老人がちょこんと座っていた。


――なんでさっきは気付かなかったんだろう? 辺りが暗いからかなぁ……。


茶色の着物、テーブルの上には手元を照らす小さな暖色のランプ。ああ、良く見るとシーツには手相と書いてある。


「もしかして……オジイサンは占い師ですか?」


「さよう。その怒りを占いで静めてはどうじゃ? なんでも見て差し上げよう。

……おや? 仕事だけじゃなく恋愛事もお困りのようじゃな」


そう。確かに占い師の言う通り、しつこく付き纏われている彼氏がいた。
< 3 / 118 >

この作品をシェア

pagetop