暗闇の鎌【読みきり短編集】
「お姉さん、もしかして目が気になるの?」


背伸びをしても届かないのに、少女はカカトをあげ、顔を近づけようと必死だ。


――止めて。その可憐な瞳を近づけないで!


「くすくすくす……お姉さん。私も前は、そうだったんだよ。これあげる」


「そうだったんだよって……貴方まだ若いでしょうに。

あ、ちょっとちょっと待って! いらないわよ!」


少女は短いスカートをひらひらさせ、身を翻し走り去って行った。


追いかけようにも、今ここを動くわけにはいかない。怒りっぽい彼とすれ違いになるのはごめんだ。
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