暗闇の鎌【読みきり短編集】
 塗り終えたマスカラは、ショルダーバックに投げ入れ、それからパタパタと両手を動かし、まつ毛に風を送り込んだ。


――大きくなーれ。大きくなーれ。彼が大好きな二重まぶたになーれー。


こんなもので大きくなったら世話ないか……はぁーあ。


「おい美知、お前なにやってんの? 遅れてごめん」


「きゃっ、翔太君! いつの間にそこにいたの!? おっ、驚かせないでよ!」


魔法のように心で呟いていると、肩を叩く彼が現れた。そして振り返った私を見た瞬間、声が一瞬上擦った。


「お、お前どうしたの……その眼――」
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