暗闇の鎌【読みきり短編集】
 そう言い、唇をでっぱらす彼は目を瞑り、今まさに私を求めている? 

ありえない。今までこんなスムーズなことあった? 

ないないないない!


犬がお風呂から上がり、水を弾くように思いっきり首を横に振ってみた状態だが、それでも翔太君は変わらず目を瞑って受身の態勢だった。


――可愛い顔。私が好きな愛しい人……


こんなことが今まであっただろうか? いや初だ。男の人と付き合って以来の初かも。

全身が熱で狂う。もっと貴方を好きになる。


「……私、翔太君のために綺麗になりたい」


愛しい唇が離れると思わずそうこぼれた。
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