暗闇の鎌【読みきり短編集】
「……十分綺麗だよ。

今日はどこに行く? そういえば美知、えっと一ヶ月前だっけか? 行きたがっていたレストランで食事する? それともバーでお酒でも飲もうか?」


パッと見ては下を向いていた目線が、今は真っ直ぐにこちらを見ていた。

奇跡だ!


知らない誰かが聞いたら大したことがないかもしれないけど、私にとっては神業、いや神秘だった。


「いつもと変わらないよ? どこも変わってない!

……けど嬉しい。好き、大好き! いつも側にいてね!」


ぎゅっと翔太君の片腕に手を回した。

これは願いでもあり、更新作業のようなものだった。

私の心はここにありますよ――と。

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