暗闇の鎌【読みきり短編集】
 ドアが風に触れ、隙間3センチから10センチほどに開いては閉じ、ゆったりと曖昧に揺れていた。


「すみません、誰かいませんかー! ドアが開いてますよー下の者なんですが……

誰かいますよね?」


始めは強気で声を荒げたが、返答がない静かな状況に自然と語尾を弱めた。


――いないはずなんてないよな?


「すみません、下の者なんですが……あの、音がうるさくて――開けますよ?」


叱咤しようと食って掛かろうと思ったのになんだか、しりつぼみにドアに手をかけた。


「……失礼」
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