暗闇の鎌【読みきり短編集】
そうだ。あの頃に戻ろう。ストレスのない世界へ。


ホームに電車が勢い良く入り込む。好きだった強い風がこちらに伝わった。もうすぐだ。大好きだった電車がやって来る。


電話を耳に当てたまま、そっと靴先を前に滑らした。


――パアアアアーン!!!!


「あ、危ない!!!!」

「ちょっとそこの人、電車がきますよ!!!!」


ザワザワと人の声がする。それよりも、昔の君の声が聞きたいよ。


あと一歩だ。あと一歩で、昔に戻る。幸せだったあの頃へ――。


「ほんと、貴方って使えない。真紀も私も、うんざりしているのよ? 前々から思っていたの……

もう別れましょう」
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