とある愛世Ⅲ
最近、仲良くしている女がいることは知っていた。
その人のことを、彼はきっと好きなのだということも気づいてた。

でも、それでも。
わたしは彼から、離れられないから。
精神的な依存から、容易に自立することなどもはやできなかったのだ。


「あの人と俺のこと、そんなに気になるの?」


朝日が差し込む彼の部屋、並んで目覚めたベッド上で目線をそらし続けるわたしに彼は問う。そんなの当たり前じゃないか、そんな意を込めて小さく頷けば、彼は決意を固めるように長く息を吐いた。

この僅かな沈黙がいや。
何を言われるか、それが容易に想像できて、数秒後の自分が待ち受けるショックを受容できるはずがないことを、どうにも感じざるをえないから。

そんなわたしの葛藤を知るよしもなく、彼は口を開く。
わたしに、残酷な現実を突きつけるために。


「……俺、あの人のことが好きなんだよね。だから、もう、終わりにしよう。」


わたしとの曖昧なカンケイに、終止符をうつために。
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