とある愛世Ⅲ
「うそつき。」

「うん。でもそれは、知ってたでしょ?」


悪びれもせずそう言い捨てる彼に、わたしの中にもやもやが広がっていく。どうしたらいいかわからなくて、でも何を言っても何も変わらないこともわかってて。

ただ、これから先のわたしの生活から彼がいなくなることが、怖かった。


「わたしのこと、もうどうでもよくなったの?嫌い、だったんだね。」

「そんなこと言ってないでしょ。あなたは特別だったよ。でも今はあなたより、あの人を大切にしたい。」


彼の言う“特別”とは一体何なのだろう。
そんなあやふやなラインで、わたしと1年もこんなカンケイを続けてきたの?


「なに、それ。それならどうして、1年もわたしと一緒にいたのよ。気持ちにも向き合ってくれなかったくせに。」

「それは、最初からわかってたでしょ。あなたの気持ちに、向き合う気はなかった。」

「じゃあ何でこの前、終わりにしようって言ったとき引き留めたの?」

「そうだね。ごめん。あのとき俺が、引き留めなきゃ良かったんだよね。」


彼の言葉に、言葉がつまる。
要するに、あれだ。わたしだけが彼のことが好きで、勝手に空回ってただけだったってことか。

虚しさに、胸が押し潰されそうになる。
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