とある愛世Ⅲ
「あーあ。早くあの子と付き合いたいなぁ。」


彼にとってわたしは、もう邪魔な存在でしかないのだ。わたしの存在が邪魔で、わたしがいるからその人と付き合えないのだと、そう彼は言う。

そうか、わたしはもう、いらないんだ。


「何で、そうなるの…?」


何で、どうして。離れたくない。終わりにしたくない。
そんな気持ちばかりが胸を満たす。


「明日からわたし、どうしたらいいの?」


わからないの、本当に。
何だかんだ言って、ツラいとき傍にいて、手を差し伸べてくれたのは彼だった。彼の存在に、たくさん救われてきた。
だから、ねぇ。いつもみたいに助けて。苦しいよ。

けれど隣の彼は、一向にわたしの方を見てはくれない。天井を見据えながら、静かに口を開く。


「ごめんね。僕のこと、一生恨んで生きて。」


でもその言葉は、もう、わたしを救うための言葉ではなかった。その言葉に、本当にこのまま呆気なく終わってしまうのだと再認識せざるをえなかった。

もう、彼に抱き締めてもらえない。
ぬくもりから安心感を得ることができない。

安易に触れることすら怖くなって、今隣にいる数十センチの距離すらもやけに遠く感じた。

今日、わたしがこの部屋を出たら最後、もうきっと彼との距離は縮まらない。曖昧なカンケイは、まともに始まることなく終わりを告げるのだ。




 ( ねえ、もう一度 )
 ( 嘘でもいいから )
 ( キスをして )
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