とある愛世Ⅱ
「本気で、言ってるの?」

「……うん。」

「何でそんなこと言うの?」


何でって、何?
他に大事な人、いるくせに。
わたしがいなくても、何も変わらないくせに。
わたしが本当は、離れたくないこと知ってるからずるい。


「どーしてわかってくれないの!?だから、ツラいんだって!もう、あの人といるとことか見てるのも苦しいの。嫌なの!」


止まりかけた涙が、再び頬を流れる。
こういうときに限って嫌な思い出ばかり頭に浮かぶから、余計涙は止まらない。


「今まで、ありがとう。楽しかったよ。」


それは、本当。
一緒にいられてうれしかったの。幸せだった。

今できる、精一杯の笑顔を最後に彼に向ける。
そして戸惑いを隠せない彼に背を向け歩き出した刹那、わたしの歩みを止めるかのように彼に後ろから抱き締められた。
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