無力な僕らの世界と終わり
「私、いつも一人だから。
斉藤先生が、気にかけてくれるの」
「そっか」
「うん」
美山さんはまつげを伏せる。
そのしぐさは、あたしの胸をきゅんとさせた。
みんな、色々あるんだな。
あたしはのんに救われたけど、誰にも手を差し伸べてもらえない、一人ぼっちの子もどこかにはいるはずなんだ。
知らないだけで。
他のクラスのことなんて、何にも分かんない。
同じクラスのことだって、よく分かっていないんだから。
みんな、それぞれ。
自分のことだけで充分に忙しい。
「ひよ、ちょっと、歩かない?」
タマゴサンドとココアを平らげると、美山さんの提案で公園まで歩くことにした。
ここからは歩いて少し遠いけど、ダイエットにもなるよね、なんて。
そんなことを言う美山さんに、ダイエットが必要だとは到底思えないけど。
すらりと脚をキレイに動かして、美山さんはやっぱり雑誌のモデルみたいだ。
いつもどこで服を買ってるのかとか。
どこどこのパスタはトマトソースが最高に美味しいとか。
そんな話をしながら二人で歩いた。
美山さんはずっとニコニコしていて嬉しそうで。
どうしてこんなに素敵な女の子が、いつも一人ぼっちでいるのか。
あたしには全然分からなかった。