無力な僕らの世界と終わり
指定されたバス停で降りた。
仁成病院前。
空を見上げると、大きな白い建物が2つ、壁のように聳えている。
仁成病院。
名前は聞いたことがある。
確か、ガン治療で有名な病院だ。
テレビで特集されていたこともあった。
最先端の設備か揃ってるって。
もしかして……
美山さんはここに入院しているのかな。
「おい」
「ひぃっ」
ぼんやり空を見上げていたら、突然声をかけられて、変な声が出た。
「う、あ……瑠樹亜くん」
「おせえ」
「ごめ、だって遠いんだもん」
今日の瑠樹亜は薄手のロンTだ。
白地に、黒の英語文字が書いてある。
それに細身のデニム。
上からあたしを見下ろす視線は、相変わらず鋭い。
バス停であたしが来るのを待っててくれたのかな。
何だか嬉しい。
「美山さんは?」
「もう退院した。
近くの喫茶店で休ませてる」
「外に出て大丈夫なの?」
「むしろ病院の中じゃまずい。
章江の親父の監視下にいるようなもんだから」
……親父の監視下。
瑠樹亜の言葉に、あたしの胸がチクンと痛む。
もしかして、この病院が……
美山さんのお父さんの病院、てこと?