無力な僕らの世界と終わり
目の前に立つ綺麗な男の子は。
雨に濡れてしまっていた。
少し色の抜けた髪が。
おでこに、頬に。
貼り付いている。
シャツも、体のラインに沿って。
ぴったりと、くっついて。
華奢な身体の輪郭を、剥き出しにしていた。
「……瑠樹亜くん、濡れてるけど」
「知ってる」
「寒くない?」
「寒い」
「もしかして、待っててくれたの?」
「……あと、15分」
「え?」
「次のバスまで」
そう言って、バス停の時刻表を指差す。
瑠樹亜は答えてくれなかったけれど。
多分、あたしを待っていてくれたのだと思う。
こんなところで。
寒いのに。
傘もないのに。
風邪をひいちゃうかもしれないのに。
「……瑠樹亜くん、ありがと」
「……」
「ありがとうね」