無力な僕らの世界と終わり
「二谷」
「あ、はい」
「今日放課後、マック」
「は、はい」
「章江と昇降口で待ち合わせしてるから」
「う、うん」
音楽室への移動時間。
廊下で瑠樹亜に話しかけられた。
『二谷』
瑠樹亜の声で呼ばれると。
何だか特別な響きに聞こえる。
もっと、うんと長い名前だったらよかったのになあ。
あやのこうじ、とか。
こひるいまき、とか。
そうしたらもっと。
その響きに酔いしれることができるのに。
学校で瑠樹亜に話しかけられることは珍しい。
しおり係の用事がなければ、まずないことだ。
あたしはのんと一緒に歩いていて。
隣にいたのんは、目を丸くしてあたし達を見ている。
瑠樹亜が立ち去った後。
「あんた達、どうなってるの……」
と、のんは不思議そうに呟いた。