無力な僕らの世界と終わり
出発
修学旅行、初日、早朝。
よく、晴れた。
青く澄んだ空が。
どこまでもどこまでも広がっている。
あたし達愛南高校二年生は、班に分かれて学校の昇降口前に集合していた。
ざわざわ。
ざわざわ。
みんな浮き足立っていて、朝早いにも関わらず、おしゃべりも弾んでいる。
あたしも、この日のためにお母さんに買ってもらった花柄の大きなボストンバッグをのんに誉めてもらって、上機嫌だった。
あれ持ってきたとか、これ持ってきた、とか。
あの噂のリップを買ってみたんだよ、洗顔も新しいのにしたよ、一緒に使ってみようよ、とか。
そんな女子の話題でのんとはしゃぎながら。
ふと、視界に瑠樹亜が入る。
人より少し小ぶりな黒いバッグを肩にかて。
相変わらず表情は読めなくて。
大きな目を伏せて。
何を見るでもなく、地面を見詰めてて。
その、瑠樹亜の神妙な顔付きに。
修学旅行の雰囲気に飲まれて、浮かれていたあたしは一気に引き戻された。