無力な僕らの世界と終わり




修学旅行は、中学の時も思ったけど。
クラスメイトの知らなかった一面を見つけて、へえー、と思うことがある。


寝相が悪いとかイビキをかくとかも、そうだけど。
こんなのが好きなんだ、とか、嫌いなんだ、とか。
何で喜ぶかとか、怒るのか、とか。

気が緩んでいる時の、格好とか。
仕草、とか。


あたしは瑠樹亜のそういうところを見逃したくなかったし。
しばらく会えないんだと思ったら、この修学旅行がめちゃめちゃ大事なものに思えてた。


だからできるだけ瑠樹亜の側にいたかったけれど。
山本を振り切ってまで瑠樹亜と一緒に座る勇気なんてあたしにはない。


前の席に向井とのんが座って、その次にあたし達。
瑠樹亜と弓子さんはあたし達の後ろで、何だかそわそわしてしまう。



「お前も大変だよなー、いつもコイツらに見せつけられて」


バスに荷物を積んで落ち着いてから、山本はそう言ってあたしに話しかけてくれるけど。
男子に話しかけられることにあまり馴れてないあたしは、何だか慌ててしまう。

山本とも、本当に時々しか話したことがないし。
暗い男の子や浮いてる子ならともかく、女子にも男子にも人気がある山本なんか、あたしにとっては雲の上の人みたいで。


それに、これはただの噂だけど。

弓子さんが山本を好きだ、とか、なんとか。

気のせいかもしれないけど。
後ろから、バチバチな視線を感じる。


「あはは、そうだね」


ここは、笑って誤魔化しておこう。













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