無力な僕らの世界と終わり





「二谷さ、最近、F組の美山と仲良くね?」


「え? あ、うん、まあ」


美山さん?

山本の口から今度は突然そんな名前が出てきて、またびっくりしてしまう。


「お前ら、何か共通点あったっけ?」


……共通点って、そりゃあ……

瑠樹亜?


ちらり、と山本の表情を窺うと、とぼけたような顔をしてる。

こいつ、知ってて聞いてんのかな。
美山さんと二人で会うことなんてほとんどないし。
確信犯なんだろうな。


「共通点なんか、ないけど」


ああ。
後ろに聞こえてるかもしれない。

別に気にはしないだろうけど。
なんだかこっちが気を使ってしまう。


「そっか。
今度、俺も紹介してよ」


「は!?」


益々意味がわかんない。


「俺、美山さんと仲良くなりてえし」


「……は」


「お前ら、付き合ってねえんだろ?」


急に声のトーンを上げる。

新幹線の中はざわついていて、山本の声はそんなに響かないとは思うけど。


「え?」


「なあ、瑠樹亜」


山本が後ろの座席を振り返るから、あたしは顔面蒼白だ。



「……は?」


突然のことで、瑠樹亜も呆気に取られてる。

文庫本を開いたまま、背の高い山本を見上げていた。


「……ん、まあ、いいや」


反応がない瑠樹亜に溜め息を吐いて、山本は再び席に落ち着く。


な、な、なんなの、突然。

心臓に悪いんですけど。









< 157 / 215 >

この作品をシェア

pagetop